09:引き算のデザイン
夕方17:30、通常業務が終わった職人たちは、自主的に作業を続けることがある。 熊倉硝子工芸に外部デザイナーはいない。月に一度、テーマを決めて社内でデザイン会議が開かれる。作り手がデザイナーであり、デザイン会議の品評会で認められたものが新たな新作としてショーケースに並ぶことになる。夕方からの時間は、そのための試行錯誤の時間でもある。
江戸切子のデザインは、カットして色ガラスを取り去っていくことで現れる、引き算のデザインである。同時に、ひとつの製品の中にたくさんの模様を詰め込めばいいのではない。模様の配置、種類、深さ、技巧の工夫、などを、使い手の歓びに向けて、いかに減らしていくか、どこまで引き算をしてデザインが成立するか、が要点だそうだ。 数多くの入門希望者があるなかで残っていけるのは、作り手としての技能に加え、創造者としての感性・発想がある者だと言う。
写真は「米つなぎ」というオリジナルの模様を持つワイングラス。緻密で細かく少しずつ大きさの違う柄の連続面がグラスを覆い尽くす。これは現社長である千砂都さんのお父様にしかできず、それも体調が乗っているときにしか手がけない。この、集中力と持続力を要求するワイングラスは先の洞爺湖サミットでも使われた一品。
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