製造業とユーザーをつなぐファクトリープロジェクト
平成19年度 東京都ものづくり新集積形成事業支援対象グループ

熊倉硝子工芸

11:変化し続ける伝統工芸

11:変化し続ける伝統工芸

千砂都さんの祖父が、丁稚から独立して熊倉硝子工芸を興したのが終戦直後の1946年。1980年代後半の工房立て替え直後から、問屋さんからの下請け業務を一切取りやめ、直販のみに切り替えた。ほぼ同時に、商用化されたばかりのインターネットで英語版を含むホームページを開設。故に<華硝>のURLは「http://www.edokiriko.co.jp/」なのである。

今、熊倉硝子工芸の江戸切子を手に入れようとして、全国どこの百貨店の店頭を見ても見つけることはできない。亀戸の工房とともにある<華硝>のお店に足を運ぶか、webを通じて注文をするしかない。直販だから、誰が何のためにどの製品を買うのか、直接目にすることができる。それが新しいデザインの方向性にも結びついていく。

また、「矢来」「籠目」「魚子(ななこ)」と呼ばれる伝統的模様に加え、「菊つなぎ」をさらに細かくした「糸菊つなぎ」、「米つなぎ」など、オリジナルの模様をつくりだすチャレンジを恐れない。グラスや食器だけではなく、ランプシェードやジュエリーなどの新しい分野の開発も怠らない。

伝統工芸が次の時代にも伝統工芸として受け継がれていくために、変化し続けることは避けて通れない道であるばかりではなく、むしろ王道なのではないか。その際に、何を変えて何を変えないか。工房の技を、デザインを通じて、顧客の歓びに結びつけていくこと、そのひとつひとつの過程で、変化と不変の研鑽が続けられている。

取材日:2009年4月7日
[写真:高橋堅/FPJ、文責:松野勉/FPJ]

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