07_循環するカルシウム
消石灰のクリームは化合塔の中で二酸化炭素と反応し、ミクロの繊維状の炭酸カルシウムとなる。これを沈殿濃縮したペーストは、屋根付きの風通しのよい建物に移される。
ここで平たい木のトレーに流し込まれて余分な水分を飛ばす。この状態ですでに粉体となった軽質炭酸カルシウムの塊は触るとほろりと崩れ、しっとりとしたお菓子の落雁のような質感である。 建物にはすべての色を微細に乱反射してしっとりとたたずむ純白のトレーが、幾重にも積み重なり、スケールを錯覚すると現代建築にも見える。
軽質炭酸カルシウムは工場内で消石灰を二酸化炭素と反応させるが、一方、漆喰は、麻スサと糊、水を適量混ぜ、壁などに施工された後、現場で空気中の二酸化炭素を取り込んで硬化する。消石灰=水酸化カルシウム(Ca(OH)2)と二酸化炭素(CO2)の反応により、炭酸カルシウム(CaCO3)と水(H2O)となる。 つまり、固まった漆喰は、その原料である石灰石と同じ組成に戻る。太古のプランクトンなどの堆積が、長い年月と人為的作用を経て漆喰となって生活の場に定着される。
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